「脳は回復する」 ~本
こんにちは
今回は本の紹介です。
鈴木氏は、41歳で脳梗塞になった。そのいきさつを描いたのが前作「脳が壊れた」です。この本は、その後の2年間を描いた本です。「高次脳機能障害」について詳しく書かれています。
脳は回復する ~高次脳機能障害からの脱出
鈴木大介 氏 (新潮社 2018年)
本書の概要を、新潮社のホームページより紹介します。
41歳で脳梗塞を発症。リハビリを重ね、日常生活に復帰した「僕」を待っていたのは「高次脳機能障害」の世界だった!
小銭が数えられない、「おっぱい」から視線が外せない、人混みを歩けない、会話が出来ない、イライラから抜け出せないの「出来ないこと」だらけに加えて、夜泣き、号泣の日々。
『脳が壊れた』から2年、著者はいかにして飛躍的な回復を遂げたのか。当事者、家族、医療関係者、必読の書。
新書で270ページのこの本。内容がとても濃いです。
内容は次の通りです。
序章 脳コワさんになった僕
第1章 号泣とパニックの日々
第2章 僕ではなくなった僕が、やれなくなったこと
第3章 夜泣き、口パク、イライラの日々
第4章 「話せない」日々
第5章 「受容」と、「受容しないこと」のリスク
第6章 脳コワさん伴走者ガイド
鈴木氏が体験したこと、そこから考えてたことが書かれており、まさに、当事者、家族、医療関係者、どの立場であっても考えさせられます。
ここでは、私が医療関係者として感じたことに触れます。
「高次脳機能障害」とは
高次脳機能とは、人間の高度な脳の働きで、注意を払ったり、記憶・思考・判断を行ったりする機能のことです。
高次脳機能障害の原因として、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)や、外傷性脳損傷、低酸素脳症、脳腫瘍、脳炎などがあります。
症状は多様で、脳のどこに損傷を受けたかによって、症状が変わります。
疲れやすく長続きしない、やる気がしない、新しいことが覚えられない、言いたいことがうまく表現できない、感情が抑えられないなど、様々な症状があります。
見た目でこの障害を持っていることが分からないので、「見えない障害」とも呼ばれます。
当事者が感じる「高次脳機能障害」を知る
高次脳機能障害のひとつに、「半側空間無視」という症状があります。これは、視界の左側に対しての意識や注意力が欠損するもので、外から見る状態としては、顔が常に少し右側を向いている、左側から話しかけられても気づかない、左側にあるものに気づかずぶつかる、ということがあります。
当事者である鈴木氏の感覚としては、「とにかく左を見たくない!」 のだそうです。例えば、「全裸の義母」とか「猫の轢死体」という見たら絶対ヤバいものが右にあるといった感覚。確かに見たくないですね。
医療関係者として、そのような理解をしていなかったので、かなりの驚きでした。
表現の仕方は、その方によって違うかもしれませんが、当事者が感じる障害について、医療関係者はもっと理解を深める必要があると思います。
第1章から第4章には、いろいろな障害について、鈴木氏の経験が詳しく描かれています。
当事者が医療関係者に求めること
本書に何度も出てくること。「患者の訴えを無視しないでほしい」
一部を抜粋すると、
確かに訴えは分かりづらいと思う。それぞれの当事者の言葉は様々だろうが、その「言葉で表現した通り」(耳が聞こえづらい、見た世界が変など)の機能が失われているわけではなくて、それぞれの刺激に対しての現実感が本人から失われている状態なのだ。
だから間違っても「検査しましたけど正常です」「気のせいです」などと言って、当事者の苦しさの訴えを無視しないでほしい。それはこの上なく残酷なことだ。
当事者の話を傾聴することは、医療関係者にとって当然のことではあるものの、こういう場合、難しい面もあると感じます。
当事者が訴えるしんどさに対する共感がしづらいのです。経験がないので実感として理解しづらい。
しかし鈴木氏は、当事者の生活のしづらさを、いろいろな表現を使って、私たち読者が追体験できるように描いています。
医療関係者や家族が、こういったことを知ることは、当事者を理解し支える上でとても役立つと思います。
新書ですが、とても内容の濃い本書。特に、医療関係者の方は必読書だと思います。
投稿者プロフィール
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作業療法士をしています。
読書と山歩き、音楽が好きです。
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