「捨て目」を利かせる

エステ・サロンのイラスト

こんにちは

今回は「捨て目」を利かせる話です。

捨て目とは、目に入るものを心に留めておくこと。また、広く見て心に留めておくことで、「捨て目を使う」「捨て目を利かせる」などと使います。(デジタル大辞泉より)

「捨て目」 昔話から

もう10年以上も前のことです。

勤務先で、保健・医療・福祉関係の施設を対象に、FAX通信を毎月発行していました。内容は、福祉用具の情報や研修会の情報など。記事は職員(理学療法士、作業療法士)が分担して書きます。

内容の1つに、「捨て目コーナー」がありました。捨て目とは、広く見て心に留めておくことです。上司が発案のこのコーナー、ケアやリハビリテーションをよりよくするために、捨て目を利かすように私たちに勧めたものだと思います。

さて、先日パソコンデータを整理していたら、当時の記事が残っていました。前置きが長くなりましたが、当時の文章のまま、ご紹介したいと思います。

エステ

9月に沖縄に行きました。秋の気配もありますが、陽射は夏そのもので顔や腕がじりじりします。沖縄の方でも暑いらしく、横断歩道の前で信号を待っていると、横の電信柱の日陰には横一列に人が並びます。たかが日陰とあなどるなかれ、とても涼しいんですよ。

滞在中に少し時間ができ、ふと思い立ってホテル内にあるエステに行ってみることにしました。女性の皆さん、エステに行ったことはありますか。私は初のエステでした。

予約した時間になり、いそいそと出かけていくと、店内は柔らかい間接照明で包まれ、静かな音楽が流れ、そこだけゆったりした時間が流れていました。ソファに案内され、女性がやってきました。最初に体調や肌の様子を書く問診票のようなものを記入し、2人で用紙を見ながら、女性からいくつかの質問を受け、答えます。

その後女性は、「それでは、本日は〇〇コースですね。最初に着替えていただいて、その後フットバスにご案内いたします。次に、お顔と手のお手入れをさせていただきます。クレンジングをして、3種類のマッサージ、保湿をいたします。保湿の間に手のお手入れをいたします。クレンジングなどは敏感肌用のものをご用意させていただきます」と手順を書いた用紙を指し示しながら、ひとつひとつ丁寧に説明してくれます。

これから何するの?と緊張と不安でいっぱいだったのが、ああそうかと納得することができました。その後も1つ1つの過程を、その都度、その場所で説明を受けながら、なんとも至福の時間を過ごしたのでした。

エステを受ける前の私は、イメージは分かるけど具体的にどんなふうなの? と頭の中にたくさんの「?」が浮かんでいました。ところが、一つ一つを具体的に説明してもらうことで、「?」が「!」にどんどん変わっていったのです。

エステの前に言葉と紙で伝えてもらうことでコースの全体を知り、その後の過程ごとにも言葉で伝えてもらい安心することができたのでした。

さて、私たちが仕事で出会う利用者が、その方にとって初めての体験をするときも「?」がたくさん浮かんでいるのではないでしょうか。

イメージしにくいことなら、「?」も浮かばないかもしれません。出会う方々の「?」が「!」に変わるような説明や対応ができているのか、どきりとさせられました。

こちらが十分に伝えたと思っていても、相手が「!」と思わなければ意味がありませんよね。あくまでも相手に合わせて、伝える内容や伝える方法を工夫することが大切ですね。

今回のキーワードは、「相手の?を!に変える対応をしよう」です。

捨て目を利かせることの意味

この捨て目コーナーも職員で分担して書いていました。当時は何を書こうと、これは記事になるかなと、ドキドキしていたことを思い出します。

このことを通して、広く見て心に留めておくことの大切さを学びました。

自分の担当する仕事、リハビリテーションという世界、保健・医療・福祉という世界。知らず知らずに、狭い常識にとらわれていることがあります。もしかしたら、そのことにも気付かずにいるかもしれません。

これはとても怖いことです。いつまでも「捨て目を利かせる」ことを忘れずにいたいと思います。

 

 

 

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じゅん

作業療法士をしています。 読書と山歩き、音楽が好きです。 詳しいプロフィールはこちら。

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