<訪問リハビリの風景> 人はすることがあるから動く
こんにちは
私の仕事である訪問リハビリは、利用者の自宅に出向いてその方に合わせたリハビリを行います。
高齢になり、足が弱くなり、歩くと転ぶかもしれない・・
ご本人だけでなくご家族もとても心配だと思います。転んで骨折したら寝たきりになるかもしれない・・
「転んだら危ないから何もしなくていいよ」というご家族もあります。
でも気をつけないといけないのは、人はすることがあるから動くということ。
何もしなくていい生活が続くと、人は動かなくなります。そして動けなくなることもあるのです。
訪問リハビリでは、することを続けるための工夫も提案しています。
人はすることがあるから動く
新型コロナウイルス感染症の予防のため、不要不急の外出を控えなければいけないこの頃。
仕事や用事が普段通りに進められず、大変な状況の方も多いかもしれません。
一方で、家にいる時間が増えることで、普段できなかったことができるという面もあります。
家にいても、家事や育児、買物など、しなければいけないこともたくさんあります。
しなければいけないことがある、したいことがあると、人は動きます。
することがなくなったら、何をしますか?
高齢になり、足が弱くなり、歩くと転ぶかもしれないという状況になると、ご家族は、転んで骨折でもしたら大変なことになる・・と心配になります。
「転んだら危ないから何もしなくていいよ」と言うご家族もあります。
では、何をして過ごしましょうか?
しなければいけないこと
睡眠 食事 トイレ 洗面 着替え 入浴 とそのための移動
これらは生きるために必要なことです。
したいこと
趣味や楽しみがたくさんある方は、それをされるのがいいですね。
今までしていたこと
簡単な食事の準備・片付け 庭の草取り 新聞を取りに行く など・・
ご家族に「転んだら危ないから何もしなくていいよ」と言われてやめることにしました、とします。
しなければいけないことにかかる時間はどのくらい?
さて、ここからが問題です。
1日24時間のうち睡眠時間を8~9時間とすると、15~16時間は起きている時間です。
しなければいけないことにかかる時間はどのくらいでしょうか。
食事 30~60分 × 3回 = 90~180分
トイレ 10~20分 × 8回 = 80~160分
洗面 30分 × 2回 = 60分
着替え 30分 × 2回 = 60分
入浴 60分 × 1回 = 60分
合計は350~520分で、6~8時間半くらいです。
多めに見積もっていますが、差し引いた時間は、6.5~10時間あります。
したいことがたくさんあったり、やろうという意欲の高い方は、その時間にすることができますね。
では、今までしていたことをしなくていいと言われた方は、何をして過ごしましょうか?
していたことを続けるための工夫
例えば、簡単な食事の準備を何とか自分でされていた方が、足が弱くなってきて、シンクから机まで運ぶのが不安定になってきました。
このような工夫があります。
・歩行車を使って、乗せて運ぶ。
歩くのが安定しますので安心して運ぶことができます。
・食事を運ぶのはご家族がされ、机の上にポットと急須、湯のみや炊飯器を置いておき、お茶やご飯は自分で食べたい分だけ入れる。
お茶の量やご飯の量を、自分で決めて自分で入れます。
例えば、毎朝、新聞を取りに行くのが日課だった方が、足が弱くなり、玄関先まで出るのが不安定になってきました。
このような工夫があります。
・歩行車を使って家の中を歩く。
・玄関の上がり框に手すりをつける。
・靴を脱ぎ履きする用の椅子を置き、座って脱ぎ履きする。
・脱ぎ履きしやすい靴を置いておく。
ちょっとした工夫で、今までしていたことを続けることができることを、訪問リハビリでは多く経験します。
今までしていたことを安全に続けることができたら・・
しなければならないことがあると、人は動きます。動くことができます。
これからも、そういった工夫を、ご本人やご家族、ケアマネジャーなど、皆さんと一緒に考えていきます。
投稿者プロフィール
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作業療法士をしています。
読書と山歩き、音楽が好きです。
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