食堂にて ~捨て目を利かせる

店員を呼ぶ人のイラスト

こんにちは

今回は「捨て目」を利かせる話です。

捨て目とは、目に入るものを心に留めておくこと。また、広く見て心に留めておくことで、「捨て目を使う」「捨て目を利かせる」などと使います。(デジタル大辞泉より)

FAX通信の「捨て目コーナー」

以前の勤務先で発行していたFAX通信。

内容は、福祉用具の情報や研修会の情報、「捨て目コーナー」などがありました。捨て目とは、広く見て心に留めておくことです。よりよいケアやリハビリテーションを提供するために、普段の生活の中から、捨て目を利かすように意識して、記事を書いていました。

10年以上前の記事が出てきたので、長くなりますがご紹介したいと思います。

食堂にて

先日、お昼に1人で食堂に行きました。

席に案内されメニューを見て、「親子丼セット」を頼むことにしました。親子丼と小さなうどんと漬物のセットです。私は忙しそうに働く店員さんに声をかけました。

私「親子丼セットをお願いします」

店員さん「はい、親子丼セットですね。かしこまりました。ご注文は以上でよろしかったですか」

店員さんは、一人で来店した私が、親子丼セットの他に何か食べるほどの大食漢と思ったのでしょうか。はたまた、昼食後にコーヒーでも頼むかなと思ったのでしょうか。そうかもしれません。でも、その時の店員さんの言葉はとても滑らかで、私にはごく自然に発せられたように感じられました。

さて、待つこと数分。美味しそうな親子丼セットが置かれました。

店員さん「ご注文は以上でお揃いですか」

もう少しで「えっ?」と言うところでした。以上も何も、最初から1つしか頼んでいません。他に何が揃えばいいんでしょう。もしかして、親子丼と小さなうどんと漬物の他に、何かついてたかな?と、思わずメニューを見そうになりました。

店員さんは机の上に伝票を置きながら、「ごゆっくりお召し上がりください」と言い終わるや否や、あわただしく去っていきました。ごゆっくりと言われても、お客の顔を見ず、にこりともせずに言われたら、とてもゆっくりしようかなとは思えません。

その時は忙しいお昼時でした。お客様もどんどん入ってきます。店員さんは次のお客様のことを考えていたのかもしれません。

そんなことを思いながら、親子丼セットを食べていました。机の上にはさっき店員さんが置いた伝票があります。何気なく伝票を見ると、次のように書かれています。

何でもおっしゃってください。あなたのお気に召すよう努力いたします。

その下には、お客が意見を書けるよう欄が設けてあります。う~ん、店員さんの対応と伝票の言葉。あまりにも対象的ですね。

さて、地域ケアスタッフも対人サービス業ですから、普段から接客サービスには注目してしまいます。ここで感じたことは、慣れの怖さです。

店員さんの対応は、何も間違っているわけではありません。慣れた仕事としてお客様に対応しているだけです。ところがお客はとても違和感を感じる。そこにはお客様に対するちょっとした配慮が欠けているのではないでしょうか。これは怖いことですね。

1人で来て、1つのものを注文した客に、「ご注文は以上でお揃いですか」と聞く必要は、当然ありませんよね。「お待たせいたしました。親子丼セットです。ごゆっくりお召し上がりください」と言われれば、私も違和感を感じなかったでしょう。店員さんがこちらを見ながら笑顔で言ってもらえれば、ほぼOKです。これをするのにかかる時間は3秒ほどでしょうか。お客様に対するちょっとした配慮と店員さんの心の余裕があれば、いとも簡単にできてしまいそうですね。

私たちの仕事を振り返ってみると、忙しいことを言い訳にして、お客様に対して配慮を忘れてはいないでしょうか。時々点検してみることも大切ですね。

今回の捨て目のキーワードは、「気をつけよう。『慣れ』と『忙しい』は対人サービスの敵」です。

自分のことに置きかえて考える習慣

懐かしく読んだのですが、「慣れ」「忙しい」のうち、特に注意が必要なのは「慣れ」です。最初は違和感があっても、知らず知らず馴染んでしまうものです。

何か気になることがあったときに、自分のことに置きかえて考える習慣をつけることは、独りよがりにならないために大切だと、改めて思った次第です。

「捨て目」を利かせる

 

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じゅん

作業療法士をしています。 読書と山歩き、音楽が好きです。 詳しいプロフィールはこちら。

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