【本】「緩和ケア医ががんになって」大橋洋平氏
こんにちは
本の紹介です。
希少ながん「ジスト」が発見された、緩和ケアに関わる医師。
患者として医師として感じたことなどを、赤裸々にユーモアを交えて書かれています。
がんについて、生きることについて、関心のある方におすすめの本です。
緩和ケア医ががんになって
大橋洋平 著 双葉社 2019年
双葉社のHPより引用
緩和ケアに携わる身でありながら、萩原健一さんの命を奪ったのと同じ希少がんを患った医師、大橋洋平さん。
初めて「患者として」実感した苦しみや気付きを朝日新聞に投稿し、大反響を呼んだ。
消化液の逆流で一晩中椅子に座って眠ることを余儀なくされる地獄の日々。スプーン1杯しか食べられず、100キロあった体重が40キロ減って愛妻に当たってしまったこと……
過酷な闘病と医学書には決して出てこない患者の真実を、得がたいユーモアを交えて明かす書き下ろし手記。
第1章 発病
第2章 緩和ケア医を目指すまで
第3章 闘病
第4章 転移
第5章 「患者風」吹かせて ~これだけは言いたい!12のこと
医師が経験したがんの治療
消化管間質腫瘍(GIST:ジスト)は10万人に1~2人と言われる希少がんです。
ご自分ががんになって初めて「患者さんのリアルな苦しみ」に気づいたそうです。
本当に手術できるのかと苦しみ、手術後は管を何本も付けられて30センチもある傷の痛みに苦しみ、退院してからは胸やけや吐き気、食欲不振に苦しむ・・・
ホスピス緩和ケアの領域では「がんになってもよりよく生きる」と言われるが、「よく」など生きられない。確実に弱っているからだ。
でも、これからをしぶとく生きていく。全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送りたい。
と大橋氏は語ります。
ちなみに、栄養剤の話や点滴の滴下スピードの話など、医療従事者の方がクスッと笑えるエピソードもあります。
「患者風」吹かせて
最終章のタイトルは、「患者風」吹かせて ~これだけはいいたい!12のこと です。
特に印象に残ったことをいくつかあげると、
「がん患者の医者」になって初めてわかったこと
がん患者のリアルな苦しみを教えてくれた。がん自体による苦しみ、がん治療による苦しみ・・ また、しんどくて薬剤を飲み忘れてしまうこと・・
わが身に降りかかってこなければわからないことだらけだと、言います。
「がんは死ぬまでに時間の猶予がある」は甘い考え
がんを切除しましたが、後に腫瘍が肝臓に転移したことが分かり、抗がん剤治療を続けておられます。
その状況では、検査結果が気になって怖い、治療はそれ以上に苦しい、治療の副作用もきつい・・・ 病気によって体力が落ちているからだと言います。
こんな時に身辺整理などできるはずがない。何もやる気が起こらない。
がんを発病した方は、がんの状態にもよるのかもしれませんが、検査結果や治療のこと、これからの生活のことなど・・ 考えることや思うことはたくさんあるのだろうと想像します。「死ぬまでに時間の猶予がある」は健康だから思うことなのかもしれません。
あきらめる、そして頑張る
がんを発病する前は、患者さんに「頑張らない、そしてあきらめない」とよく話してきたそうです。
でも、がんが転移して、病気の進行による体の弱りを感じる中、がんは持ったままで、外には出られなくても、今をこれからを生きるために希望をもちたい・・
今までの希望はあきらめて、これからの希望、生きることを頑張っていく、と語られています。
本書では、他にも、ご家族とのつながり、医者としての考えなど多くのことが、分かりやすく、時にユーモアを交えて、分かりやすく語られています。
がんのこと、生きること、家族のこと・・ いろいろなことを考えさせられました。ご興味のある方はぜひ手に取ってみて下さい。
ちなみに kindle unlimited でも読めます。(2020年2月2日現在)
投稿者プロフィール
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作業療法士をしています。
読書と山歩き、音楽が好きです。
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